Dレンジとラチチュード

今回もまたまた難しそうなタイトルで「Dレンジ」、省略せずに言うと「ダイナミックレンジ」と「ラチチュード」という普段はあまり聞きなれない言葉が出てきます。でも、デジカメの画質を右左する重要な意味を持つ言葉でもあるので今回はこの事を少し掘り下げてみましょう。
ところで、オーディオをやっている人間には「ダイナミックレンジ」と言う言葉は日常用語です。また、カメラマニアには「ラチチュード」と言う言葉はポピュラーな言葉になっています。では、一体その言葉の意味するものは何か、説明するよりも実際に写真を見てもらった方が早いので、またまた下の2枚の写真を見比べてください。ちなみに写真をクリックで大きな写真へとLinkしています。
同じ様に笹ヤブの中にいるまるを撮った写真ですが色合いが全然違います。ちなみに左がNikonD1、右がNikonCoolPix990で撮影した写真になりますが、違いを見てもらうために極端な場面にて撮影しているので、CoolPix990がいつもこんな写真ばかりしか撮れない訳ではありません。
まず、D1で撮影した写真は豊かな発色で濃い色から薄い色までの階調も滑らかです。ところが、CoolPix990で撮影した写真は階調の少ない、パソコンの画面のプロパティで言えば16色表示のようで、笹の葉っぱと地面が白くなってしまっています。逆にまるの体は真黒くなってしまい、どこが足か胴体だか分かりません。
なぜ白くなってしまったかと言うと、笹の葉っぱ普通の木の葉っぱに比べると非常に強くなっていて少しくらい引っ張っても縦方向には破れません。葉の繊維が非常に強いのですが、これはケイ素、つまりガラスが繊維に含まれているからなのです。ガラスが含まれているので笹の葉で手を切ったことのある人もいると思います。ここまで書くとピーンときた人もいると思いますが、ガラスという事で笹の葉は光を非常に反射しやすい性格を持っています。。同様にこの写真は中央アルプスは安平路山で撮影したものですが、中央アルプスはそのほとんどが花崗岩質の山脈です。花崗岩と言えばやはりケイ素を多く含む岩石なので光を反射しやすい性質を持っています。
夏の晴天下では強い日差しが照付けていますが、笹ヤブの中では笹の葉がその光を反射して"ダイナミックレンジ"の狭い300万画素や400万画素のコンパクトタイプのデジカメではいとも簡単に白く色が飛んでしまいます。ちなみにD1で撮影した方はやはり夏空での撮影でしたが霧が出ていて直射日光が届かないと言う比較的良い条件で撮影したものです。

さて、やっとここで"ダイナミックレンジ"なるものの話ですが、オーディオにいきなり話を持っていきます。オーディオの世界でもダイナミックレンジが広い方が好まれます。では、ダイナミックレンジが低いものとは・・・・?。いちばん簡単な例だと小型のラジオ。ちゃんと話は聞く事ができるし音楽だって誰が歌っているかすぐわかります。でも、家にあるステレオと比べると明らかに音質は劣っています。どうしてでしょうか・・・・?。簡単ですね、小型のラジオはスピーカも小さいし、アンプの出力も小さい、当たりまえです。音質を犠牲にする事によって小型にしているのです。
実際の音楽は人間の耳では聞こえないような低音から高音、またはドラムや太鼓などの鼓膜の破れそうな大きな音のものやバイオリンなどの繊細な音のするものなどさまざまな要素で組立てられていますが、小型ラジオでは大きな音や繊細な音は出すことができません。つまり、ダイナミックレンジが狭いという事になります。ステレオは小型ラジオより大きな音も繊細な音も出す事ができ、ダイナミックレンジは比較すれば広いといえます。

最近のデジカメはオーディオならスピーカーやアンプにあたるCCDの画素サイズをどんどん小さくしてきました。普通の人は200万画素のデジカメより300万画素、300万画素より400万画素のデジカメの方が写真が繊細になって画質が向上すると考えてしまいます。でも実際は小型ラジオをたくさん並べて音楽を聴いているような物で実際は上の写真のような光が強いところと暗いところが混在する極端な場面を撮影するとてきめんにその弊害が現れてきます。以前、「画素数について」のところでCCDの画素のサイズがコストを下げるために小さくなっていると書きましたが、1999年代は1/2インチ200画素のCCDを積んだデジカメが主流で、このCCDは画素サイズが1辺が3.9μ(ミクロン)と言うサイズでした。翌年の2000年は1/1.8インチ300画素のCCDを積んだデジカメが発売されましたが、このCCDはとうとう1画素あたりのサイズが四捨五入した数値が4μを割込み3.45μとなってしまい、更に今年は1/1.8インチ400万画素のCCDを積んだデジカメが出てきて画素サイズは3.1ミクロン、どこまで微小化が進むのでしょうか・・・・

と、嘆いていてもしょうがないので実際のダイナミックレンジ、つまり強い光が当たった所がどの位で白く飛んでしまうかをまた、手持のデジカメで試してみましょう。またまた画像をクリックで大きな写真へとLinkしています。


Nikon Coolpix990

SANYO DSC-MZ1

OLYMPUS C-2100UltraZoom

Nikon D1+F24-120mm
下の表を参考にしてもらえばすぐに納得してもらえると思いますが、画素ピッチが小さいデジカメほど顕著に光の強いところが白く飛んでしまっています。また、画素ピッチが桁違いに大きいD1はほとんど白く飛んでいません。コンパクトタイプのデジカメで健闘しているのはやはり4.4μの画素サイズのDSC-MZ1です。画素ピッチのボーダラインは4.5μ前後となりそうです。

機種名 CCD詳細 画素サイズ(概算)
Nikon CoolPix990 1/1.8インチ300万画素 3.45μ
SANYO DSC-MZ1 1/1.8インチ200万画素 4.4μ
OLYMPUS C-2100 UltraZoom 1/2インチ200万画素 3.9μ
Nikon D1 24.5mm×15.3mmサイズ274万画素 11.8μ

フィルムカメラの世界ではデジカメで言うところのダイナミックレンジをラチチュードと言います。ラチチュードが低いと色に深みがなく、階調も豊かではないので写真をやっている人なら気にする部分です。でも,デジカメの場合はまだ市場が成熟していないようで、「色が深みがあって綺麗です」と広告するよりも「今度は400万画素」「次は500万画素」と具体的な数字を出して広告した方が説得力があるのでデジカメ業界は画素数に走ってしまっています。
でも実際、200万画素のDSC-MZ1でもレタッチソフトで工夫して印刷すると300万画素機よりも晴天下で撮影した写真では色に深みがある分、綺麗に見える場合があります。旧機種のデジカメは150万画素、200万画素と画素数は多くはありませんが、実はCCDの大きさは今の400万画素機とほとんど変わりません。つまり、それだけ画素が大きいという事です。レタッチを工夫する事で今の400万画素機に劣らない画質で印刷する事も可能です。またホームページにのせる場合は35万画素のデジカメでも問題ありません。ここはひとつ、次々と高画素を売りにしたデジカメを発表して購買意欲をそそるメーカーの戦略を冷静に見つめましょう。

(2001年10/15 記)